風が吹く、というのは考えてみれば不思議なことです。
土の塊である巨大な球に、なぜ風が吹くのでしょうか。
理論的には、地球が自転公転する中で、太陽の熱によって大気の温度が変化し、気圧の高低差で風が生まれる、と説明できます。
それを私たちは空気の動き=風と認識するのです。
それにしても、地球が自転(地球自身がくるくる回る)したり、公転(太陽の周りを回る)したりするのも不思議ですが、星が生まれる前からあった宇宙の回転運動によるものだと聞いても壮大すぎてピンときません。
風を説明するのに、宇宙まで思いを馳せなければならないなんて。
日々、意識的にも無意識的にも感じている風は、実は宇宙規模のエネルギー運動によるものなのです。
地球は、生きている
ここで視点を地上に下ろします。
宇宙規模のことなんて、まったく意識することなく、風を感じています。
風は空気の動きに過ぎません。空気が動いている、ということすら意識せずに暮らしていけます。
でも、「動いている?」ということは、「生きている?」というふうに捉えることができます。
地球が生きている。
地球が巨大な生命体である、というのは、ガイア理論と言って、1960年代にイギリスの科学者ジェームズ・ラブロックにより提唱されました。
地球上のあらゆる生物は地球と相互に関係しあい、自分自身が生きるための環境を維持している。そうしたシステム自体が巨大な生命体であるはずだという仮説です。
地球がただの土の塊であれば、その球体がただ宇宙空間を漂うばかりで、なんの動きもないように思います。
しかし、実際には、自転公転していますし、風が吹き、海流が大きな水の流れを生み出し、火山が噴火し、プレートが動いて地震も発生します。地中の奥深くでは、マントルや核が2千度から6千度というとんでもない高温を保っています。人間が体温を維持しているようなものです。
これって、いたるところで、地球が自律的に動いているように見えます。もう生命体といってもいいものです。
風は、地球の血液
そうした中で、風は、人間でいう血液のような働きをしています。
大気汚染や空気の澱みがあっても、風が吹けば、その場所は浄化され、新鮮な空気が供給されていきます。
風は植物の種を運び、広範囲に生命の息吹を根付かせています。
時に暴走して、台風や嵐を巻き起こすこともありますが、こうした大気の攪拌によって、地球の恒常性が保たれて、生命が持続的に維持されているとも言えるのです。
「風が気持ちいいね」の正体
そのような風だから、穏やかに吹いてくる時には、感情の生物とも呼ばれる人間にも、少なからず影響を及ぼすものと考えています。
「風が気持ちいいね」
そんな言葉があいさつのように出てくるのは、無意識にも風の恩恵を受けている証拠でもあると思います。
風は人間を気持ち良くさせるものでもあるわけです。
そして、風に触れる、ということは、この地球という生命に触れることでもあります。
巨大な地球にしてみれば、私たちのような人間は目に見えないほど、小さな存在でしょう。
よく「人体は小宇宙」という呼ばれ方をすることもありますが、私たちの体内にも腸内細菌など無数の独立した生命体を宿しています。そもそも、人体自体が60兆個もの小さな細胞の集まりです。
それでも、こうしてひとつの個体として生存している。
カフェの窓から
ちょうど今、ビルの2階にある喫茶店から、この原稿を書いており、眼下には人々があらゆる方向に歩いています。近いところにいる人は、顔も認識できますが、遠くで歩いているひとは、何やら動いている点のようにしか見えません。
そんな中、救急車が横ぎりました。だれか緊急事態となっている人がいることのサインです。
目の前のひとつの視界の中で、ずっと地上に降りてくるとさまざまなドラマがあり、大変なことや、苦しいことを体験している人がこの瞬間にもいることがわかります。
逆に、駅前広場において風船で遊んでいる子どもたちのように、この瞬間に幸福な時間を感じている人もいます。
その中を風が通っている。
生命の中で、生かされている
風の中で生活しているということは、生命の中で生命が生きているということです。
地球という生命の中で、生かされている。
風という生命の流れに触れることで、生かされていることを確認し、そして、今日という1日を過ごしていきたいものです。
地球に風が吹いているから生きていられる。これからも、この風の観察を通じて、幸せに生きていくにはどうすればよいのか、追い求めていきたいと思います。
