夏の終わりの夏の風
背後から北の風がそっと頬を撫でた。風速計の針は0.2メートルから0.6メートルの間を揺れ動き、ほとんど無風に近い静けさの中に、確かな空気の流れが存在している。
気温は30度を超えている。数字だけ見れば、まだ真夏の盛りだ。けれど、この風には、ほんのわずかな違和感がある。夏の盛りに吹く南の熱風とは少し違う。北から届くこの風には、どこか異なる質感が混じっているように感じた。
風を感じるとき、わたしはいつも目を閉じる。皮膚の上を空気が流れる感触に、意識をそっと向けると、風の中に何層もの情報が宿っていることに気づく。今日の風の底には、夏の残熱がまだ満ちているが、その縁のあたりに、なにか別の要素が紛れ込んでいる。そうだ、これは秋だ。まだ一割にも満たないかもしれないけれど、確かに秋が、この風の中に混ざっている。
白露(はくろ)を過ぎた頃から、空気の肌ざわりが変わり始める。見た目の景色は変わらなくとも、皮膚が感じる風の質が、ひそかに変容していく。それを一番よく知っているのは、暑さの中で風を待つ人間の肌なのかもしれない。
木々は、まだ夏の緑を深々と纏っている。蝉の声もまだ高い。しかし、今日のこの北の微風は、もうすぐ秋が来るよと、耳もとでそっと囁いているように聞こえた。
もうすぐ、もっと心地よい風が吹いてくる。その日を、じっくりと待ちたいと思う。
今日の風に合うもの
- 麦茶
- 白い綿の服
- 風鈴の残り音
今日の風の豆知識
白露(はくろ)は9月8日頃の二十四節気。野の草に白い露が宿り始め、大気中の水分が朝露として結ぶほど朝夕の気温が下がり始める頃です。風の質が変わる最初の節目とされています。
風のデータ
- 年月日:2024年9月5日
- 天気:晴れ
- 風速:0.2〜0.6m/s
- 気温:30.4℃
- 方角:北
