雁は現れなかったけれど

北東から、1.3から3.1メートルの冷たい風が届いた。秋雨前線が近く、曇り空が続いている。この時期の北からの季節風を、雁渡(かりわたし)という。雁を渡してくる風——その名が美しい。

子どもの頃、秋の空を見上げると、V字の編隊を組んで雁が渡っていくのを見た記憶がある。高い空の、小さな影たちが、澄んだ秋の青の中を、遠くへ向かって飛んでいた。その雁たちを運んでくる風が、雁渡だ。

しかし最近は、雁の姿を見なくなった。温暖化で渡りのルートが変わったのか、それとも数が減ったのか、詳しいことはわからない。しかし、毎年秋に空を見上げても、あのV字の影は現れない。

雁渡という風の名は、今もここにある。でも、その風が連れてくるはずの雁は、来なくなった。名前だけが残って、その名が指すものが消えていく。それはとても寂しいことだと思う。

北東の冷たい風が吹き続けている。雁がいなくても、風は来る。その風の中に、少しだけ寂しさを感じながら、空を見上げた。

今日の風に合うもの

  • 秋の空を見上げながら飲む温かいコーヒー
  • 渡り鳥を探しながらの散歩
  • 鳥の声に耳を澄ます時間

今日の風の豆知識

雁渡(かりわたし)は秋に北から吹く冷たい季節風で、雁(かり)が渡ってくる頃に吹くことからその名がつきました。かつて日本の秋空を彩ったV字編隊の雁は、温暖化や環境変化により数が減り、見かけることが少なくなっています。

風のデータ

  • 年月日:2024年10月6日
  • 天気:曇り
  • 風速:1.3〜3.1m/s
  • 気温:22.2℃
  • 方角:北東