秋が来るまで、まだ少し時間がある

青い葉が、時々、静かに揺れる。でも、すぐにまた止まる。風は来たり去ったりを繰り返し、風速計の針は〇から〇・六メートルの間をゆっくりと動く。

無風の時間の方が長い。風が来るたびに、南の湿った空気が一瞬だけ届いて、また消えていく。こういう風は、観察が難しい。じっと待って、ようやく一瞬だけ触れた感触を、記憶に刻む。

真南から吹いてくるから、正南風(まはえ)と言えなくもない。でも今夜の風は、正南風と呼ぶには、いかにも気の抜けた感じがする。正という字には、真っ直ぐで力強いイメージがあるが、今日の風にはその逞しさがない。

それよりも、「暇」という字の方が似合う。暇南風(いとまばえ)。風が、のんびりと南から来て、しばらく休んでは、また気まぐれに吹く。忙しなく働く梅雨の荒南風とは違い、今夜の風は、ゆっくりと余暇を楽しんでいるようだ。

秋が来るまで、まだ少し時間がある。風も、その時を待ちながら、暇を持て余しているのかもしれない。楓の青い葉が、たまに揺れて、また静かになった。

今日の風に合うもの

  • 蚊取り線香の煙
  • 縁側や窓辺でゆっくりする時間
  • 冷やしたきゅうりの浅漬け

今日の風の豆知識

「いとま」は暇・余暇の意。風がのんびりと休みながら吹くさまを表します。漁師言葉の「ばえ(南風)」を借りて、気まぐれに吹いては止む穏やかな夜の南風につけた名前です。

風のデータ

  • 年月日:2024年9月10日
  • 天気:薄曇り
  • 風速:0〜0.6m/s
  • 気温:29.1℃
  • 方角: